2021年にテーラーメイドからTRUSS(トラス)パターが登場しました。すると日本女子プロゴルフツアーで使用率が高まり、稲見萌寧選手を筆頭に、堀琴音選手や若林舞衣子選手など、使った選手が次々と優勝。そういった実績も手伝い、一般ゴルファーが入手困難になるほど、人気を得ました。
プロアマ問わずトラスパターが支持を得た理由が、ネック形状にあります。一般的なパターのネック形状は、長方形をしていますが、トラスパターは三角形なのです。
三角ネックは最先端として扱われている風潮がありますが、実は昔からあったものです。昔の三角ネックのパターを見ると、昔のものに新しさを加えて‟革新的な設計”としていることがわかります。
一般的なネック形状
パターのネックは、最もポピュラーな「クランクネック」のほかに「ショートネック」「ベントネック」「センターシャフト」などがあります。ヘッド形状が同じでも、ネック形状が異なると、ストロークやインパクトのフィーリングが異なります。人それぞれに‟フィットするネック形状”があるのです。








三角ネック
トラスパター
トラスパターの三角ネックは、建築物設計の「トラス構造」から着想を得たようです。‟ブレずに安定する”する建築方式を参考に、インパクト時のブレを抑え、球の転がりを安定させています。




橋などの建築物に使われている構造形式。多角形の中で一番強度が大きいとされる三角形で構成された構造で、衝撃に強く、安定性が高いとされている。橋以外にはドーム型の屋根などで採用されることが多いことも、安定性の高さを表していると言える。
トライビーム
トラスパターの登場、ヒットにより、「オデッセイでも三角ネックでを作れないか」ということで、誕生したのがTRI-BEAM(トライビーム)パターです。名前にあるBEAMとは、建物において上からの荷重を支えている梁(はり)のことです。トラスパターのTRUSSと同じような意味です。




昔もあった、三角ネック
トラス構造を想起させる設計は、革新的なものに感じるかもしれませんが、すでにあった設計です。新しく出てきた設計ではないのです。
1991年にタイトリストから発売された、DEAD CENTER PUTTER(デッドセンターパター)は三角ネックです。








ヘッドの素材や、ヘッドにウェイトを搭載する、最近よく見るテクノロジーは当時はまだ採用されていなかったようですが、DEAD CENTER PUTTERを見ると分かる通り、基本コンセプトはすでにあったもので、それを復活させたものが最近注目を集めているトラスパターであり、トライビームパターなのです。
過去採用した設計を活用
テーラーメイドのトラスパターには同社が過去にリリースしたパターの中に原型となったモデルがあると言われています。以下の画像のcb.2パターです(発売年は不明)。確かに、ヒール側のネックからヘッドにかけてのデザインがトラスパターのそれと似ていますね。








時代は回る?
ドライバーやアイアンは「より飛ぶ」「より安定する」などの結果で、クラブの特徴を打ち出すことができますが、パターでそのモデルのカラーを出すためには見た目や打感など、ゴルファーの‟感覚”に訴えかける必要があります。
慣性モーメントを大きくするヘッド構造や、インサートのテクノロジーは、出し尽くした状態に近いものがあり、ヘッド構造でインパクトがある革新性を新たに出すのは難しくなってきているのかもしれません。
であるなら、ネックに注目、ということでクラブ開発チームがネックに注目したのでしょう。過去に同様のコンセプトのパターがリリースされてはいるものの、現在、日々ゴルフを楽しんでいるコア層は、DEAD CENTER PUTTERや、cb.2パターの存在は知らない世代でしょう。三角ネックがとても新鮮に映るはずです。
ゴルフ業界以外に目を向けてみると、例えばファッション業界。1990年代に流行したアムラーファッションが、2020年頃に再びブームになりしました。新たにリリースされるパターの設計に同様の‟復活”が垣間見えるのは、自然な流れかもしれません。時代は回るのです。