2戦目以降問われる 渋野日向子のスイング改造の是非

オリンピックのシンボルマーク 女子

今季の女子ゴルフ開幕戦となったアース・モンダミンカップが6月25日~28日に開催されました。結果は渡邉彩香選手が、昨季賞金女王の鈴木愛選手とのプレーオフの末の感動的な5年ぶりの復活優勝となりました。

そして、注目の渋野日向子選手はというと、よもやの予選落ち。本人は予選落ちの後「寝たら忘れた」と、コメントしていましたが、ゴルフファンにとっては不安になる結果となってしまいました。渋野選手はオフの間、筋力トレーニングだけでなくスイング改造に着手していました。その改造の影響によるものなのでしょうか。

右足かかとの浮き上がりを抑える

右足かかとの浮き上がりを抑える取り組みをしてきていました。師事している青木翔コーチ主導でスイング改造に着手したようですね。

青木翔著 打ち方は教えない。

渋野日向子のコーチ 青木翔著「打ち方は教えない。」は選手との接し方を説いた本

試合では意識せずにスイング

アース・モンダミンカップでのスイングを見ていると、足の動きはあまり意識していないように感じます。右足かかとは練習の時よりも浮き上がっていました。昨季よりかは抑えられているような気がする、といった程度です。練習では意識しても、試合では意識しないというスタンスで臨んだようですね。練習場で体に馴染んだものを信じて、あとは普段通り思い切りよくスイングすることに徹したのでしょう。

試合ならではの作用

おそらく、渋野選手自身、開幕戦に臨むにあたり、スイングに大きな不安は無かったと思います。初日にグリーン上でマークを戻し忘れて2打罰を受けても、あまり気にしていませんでした。初日終了時点で、イーブンパーの59位タイでしたが、予選落ちするということは頭に無かったと思います。しかし結果は違いました。

おそらく、本人が気づかないところで、試合ならではのスコアを出さなければいけないという気持ちが多少なりとも働き、ショットの精彩を欠いたのでしょう。積極的に筋力トレーニングを積んだことも踏まえれば、新しい渋野日向子の開幕戦となったでしょうから、その新・渋野日向子が試合ならではの作用に免疫がなかったということでしょう。

オリンピック代表入りのためには昨季同等の活躍が必要

渋野選手の今後の大きな目標として挙げられるのが、2021年に延期になった東京オリンピックの日本代表入りです。現時点での渋野選手の世界ランキングは12位で日本人2番手。3番手には世界ランキング14位の鈴木愛選手がつけています。よって、渋野選手は世界ランキング15位以内死守が、目標クリアに向けて課せられたミッションとなります。

オリンピック女子ゴルフ出場資格
  • 2021年6月28日時点のオリンピックゴルフランキング上位15位までの選手で、各国最大4名まで。
  • 16位以下については、1か国2名(15位以内の有資格者も含む)を上限とする。

※オリンピックゴルフランキングは世界ランキングを基に決められます。

渋野選手は、昨季全英女子オープン優勝直後に世界ランキング14位になりました。そして現在が12位。ということは、昨季の全英女子オープン以降と同等の成績が、来年6月28日まで必要ということですね。

渋野の昨季の全英女子オープン後の、日本ツアー成績は13戦して2勝、トップ10が7回、予選落ち1回、という成績でした。振り返ってみると、あらためてすごさを感じます。

そこで気になるのがアース・モンダミンカップでの渋野選手の予選落ち。今季の活躍をうらなう上で、開幕戦の予選落ちは気にしなくて良いのかどうかを判断するために、過去5年の賞金ランキング上位3名の、その年の開幕戦(開幕戦不出場の場合、その選手の初戦)の成績を調べてみました。

過去の賞金ランキング上位3名の開幕戦(初戦)順位
年度 賞金ランキング 氏名 その年の開幕戦(初戦) 順位
2019 1位 鈴木 愛 ダイキンオーキッド 予選落ち
2位 渋野 日向子 PRGRレディス 6位タイ
3位 申 ジエ ダイキンオーキッド 5位タイ
2018 1位 アン ソンジュ ダイキンオーキッド 29位タイ
2位 申 ジエ ダイキンオーキッド 3位タイ
3位 鈴木 愛 ダイキンオーキッド 3位タイ
2017 1位 鈴木 愛 ダイキンオーキッド 18位タイ
2位 イ ミニョン ダイキンオーキッド 35位タイ
3位 テレサ・ルー ダイキンオーキッド 予選落ち
2016 1位 イ ボミ ダイキンオーキッド 6位
2位 申 ジエ ダイキンオーキッド 3位タイ
3位 笠 りつ子 ダイキンオーキッド 2位
2015 1位 イ ボミ ダイキンオーキッド 5位タイ
2位 テレサ・ルー ダイキンオーキッド 優勝
3位 申 ジエ ダイキンオーキッド 8位タイ

昨季賞金女王だった、鈴木選手も開幕戦で予選落ちしていたのですね(2戦目優勝)。2017年賞金ランキング3位のテレサ・ルー選手も開幕戦予選落ちでした。ということは、渋野選手の予選落ちもあまり気にしなくても良いかもしれませんね。

追い込み過ぎないように注意が必要

予選落ちの後、渋野選手は「練習量が足りない。もっともっと練習が必要」とコメントしていました。青木コーチも「地獄を見てもらう」とハードなトレーニングを課すことを意味するコメントをしていたようです。

ただ、重々承知でしょうが、あまり気負わなず焦らないことが大切です。本人は挑戦者のつもりでこれからも戦い続けるとは思いますが、周りの目はそうではありません。「今季も活躍して当然」「オリンピック日本代表にはなるだろう」という目で見られるはずです。メディアでの活動が増えたり、昨年までとは違って自分のペースでゴルフに取り組むことが難しいことも多々あるはずです。仮に不調が続くようなことがあれば「スイング改造失敗」「トレーニング失敗」と言われるでしょう。

どんなに不調が続いても、周りから色々と言われても、地に足つけて、怪我の無いように取り組んでもらいたいとところです。そして、来年の東京オリンピックの舞台に上がり、そして、メダルを手に(口に?)、全英女子オープンの時以上の輝くシンデレラスマイルを炸裂させてもらいたいと思います。

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