「スライスは飛ばない」というのが一般的な認識です。実際、スライスは飛距離が出にくいです。しかし、もっと突き詰めて考えるとスライスボールが飛ばないのではなく”スライスするクラブの動きだと飛距離が出にくい”というのが正解になります。これだけでは、どういうことか分からないですよね。詳しく説明してみたいと思います。
スライスする要因
その1:フェースが開く
スライスする要因と挙げられる1つ目ポイントが、インパクトで「フェースが開く(右を向く)」ことです。細かく言うとヘッドの軌道によってはフェースが開いても右に曲がりませんが、ここではフェースが開くとスライスする、ということにします。
スライスは「フェースが開く」ことで起こることがほとんどです。ダウンスイングでうまく左前腕を外旋、右前腕を内旋させることは多くのアマチュアにとって難しい動きなので、どうしても、フェースが開いてしまってスライスがなかなか治らないゴルファーは非常に多いです。
その2:ヒールに当たる
次に2つ目のポイントが、「ヒール寄りに当たる(シャフト寄りのフェースに当たる)」ことです。”ギア効果”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
インパクトの瞬間、ボールがクラブフェースのヒール寄りに当たった場合、ヘッドは反作用で反時計周りに回転しますが、ボールは、逆回転の時計回りに回転(スライス回転)します。ボールがクラブフェースの先よりに当たった場合、ヘッドは反作用で時計回りに回転しますが、ボールは逆回転の反時計回りに回転(フック)回転がかかります。
フェースのトゥ寄りに当たればフック回転がかかり、ヒール寄りに当たればスライス回転がかかるのが”ギア効果”です。ドライバーでヒール寄りすぎると、逆に大きく左に飛びますが、基本的にヒール寄りは右に曲がりやすくなります。
その3:アウトサイドイン
3つ目のポイントが、インパクトでクラブヘッドの軌道がアウトサイドインになることです。クラブヘッドを体の遠い所から近い所に引き込む動きです。卓球やテニスでの「カット打ち」のイメージが、このアウトサイドインです。
「ヒールに当たる」以外は、飛距離減の直接的要因とは限らない!?
飛距離を出すには、ボールの「初速」「打ち出し角」「バックスピン量」がポイントになります。これらについて知らない方は過去の記事「飛距離3大要素」を見て下さい。
先に「右に曲がる原因」で述べた、その2の「ヒールに当たる」はインパクトまでのクラブの動きに関係なくボールの初速減に確実につながりますので、飛距離減の直接的要因になります。
しかし「フェースが開く」「アウトサイドイン」は飛距離減の直接的要因にはなりません!
まず、「フェースが開く」についてですが、同じ「フェースが開く」でも大きく分けて2種類有ります。それは「ダウンスイング中ずっと開いたままでインパクトでも開く」と「ダウンスイング中閉じる動きがありながらも、閉じきれず、開いてインパクト」の2種類です。
前者の、ずっと開いたままでインパクト、の場合だと、インパクトではボールとの衝突時の衝撃にクラブヘッドが当たり負けしてしまい、ボールに力を伝える事ができません。
しかし、後者の、閉じる動きが間に合わず開いてインパクト、の場合は、フェースが閉じながら、つまり返りながらインパクトをしているため、ボールとの衝突時の衝撃にクラブヘッドが当たり負けせず、強くボールを押し込むことができます。
次に「アウトサイドイン」についてです。「アウトサイドイン」自体が飛距離減に繋がりません。アウトサイドインになると、「クラブヘッドの入射角が鋭角になってスピン量が増えやすい」点で、飛距離減になりやすいです。つまり、別の言い方をすると、アウトサイドインでも入射角を適正にできれば、飛距離減には繋がりません。
バッバ・ワトソンはスライスボールが持ち球
マスターズチャンピオンである、世界の飛ばし屋、バッバ・ワトソン(左打ち)は大きく左に曲がるスライスを持ち球にしています。
なぜ飛ばせるかというと、アウトサイドインでスイングしながらも、フェースを返しながらインパクトを迎え、入射角を適正(アッパーブロー)にできているからなのです。やはり”スライス回転が飛距離減の直接的要因ではない”ということで、”スライス回転になる要因の中に飛距離減に繋がる要因がある”ということですね!?
「スライスは飛ばない」という一言で片づけず、「なぜ飛ばないか」まで踏み込んで考え、理解することで、練習の内容が濃くなります。飛距離の法則について理解を深め、充実した練習へとつなげましょう。