武術の探究者である甲野善紀氏と、甲野氏の弟子で体の使い方を伝えている方条遼雨氏の著書「上達論」を紹介します。ゴルフと武術は関係が無いように感じるかもしれませんが、意外に共通するものはあります。というよりも、本質的な部分ではどのスポーツにも共通する部分はあります。
武術では筋力ではなく重力を活用しながら、相手を倒すことを考えます。これはゴルフの技術にもあてはまるものです。ゴルフは自身の体の重力だけでなく、クラブの重力も使いますが、それらの重力や遠心力の活かし方は、武術に関連付けられます。野球や卓球などに応用されてきた実績にも頷けます。
「上達論」はあらゆる技術や動作を習得するために必要なものが、武術を究めている甲野氏独自の目線で語られている本です。
甲野善紀(こうの よしのり)略歴
1949年東京生まれ。武術研究者。20代の初めに「人間にとっての自然とは何か」を探求するため武の道に入り、1978年に「松聲館道場」を設立。以来、剣術、抜刀術、杖術、槍術、薙刀術、体術などを独自に研究する。2000年頃から、その技と術理がバスケットボール、野球、卓球などのスポーツに応用されて成果を挙げ、その後、楽器演奏や介護、ロボット工学などの分野からも関心を持たれるようになった。2006年以降、フランスやアメリカから日本武術の紹介のため招かれて講習を行う。2007年から3年間、神戸女学院大学の客員教授も務めた。2009年から森田真生氏と「この日の学校」開講。著書に『剣の精神詩』、『できない理由は、その頑張りと努力にあった』、『自分の頭と身体で考える』(養老孟司氏との共著)、『薄氷の踏み方』(名越康文氏との共著)、『巧拙無二』(土田昇氏との共著)など多数
月2回、夜間飛行からメールマガジン「風の先・風の跡」を配信中。
hrttp://yakan-hiko.com/kono.html
方条遼雨(ほうじょう りょうう)
玄武術【天根流】(げんぶじゅつあまねりゅう)主宰。
甲野善紀、中島章夫に武術を学ぶ。
両師の術理に独自の発見を加え、「体・動きの根本原理の組み替え」と「脱力」に主眼を置いた「玄運動(げんうんどう)」「玄武術(げんぶじゅつ)」を提唱。スポーツ指導者・パフォーマー・格闘家・芸術家など、ジャンルを問わず「体の使い方」を伝える。
また、「身体と心は完全に同一である」という独自理論を元に、心と体の整え方・緊張の治し方教室やカウンセリング・身体調整も行う。
近年ではサッカー・スタント・歌舞伎・掃除など異分野との交流や合同講師としても活動している。■玄武術【天音流】HP:http://hojos.blog135.fc2.com/
■X(ツイッター)/フェイスブック:「方条遼雨」
一部引用
本に書かれているものを一部引用して紹介します。
甲野先生の象徴的原則でもある「不安定の使いこなし」。
そもそも、「不安定」とはなんでしょうか。「不」安定というからには、対極に「安定」があります。
武術において技を繰り出すのは肉体ですから、肉体における何らかの「安定」を崩すのが「不安定の使いこなし」ということになります。
「筋力系」と「重力系」を分けて考えているのはなぜか。その決定的な違いは、「動いた結果体重が移動している」のか、「体重で移動している」のか、という点です。
現在の教育システムは、知識の「コレクター」を量産しており、それが問題なのです。
では「根本的能力」を高めるにはどうしたら良いのでしょうか。
まず、「脳の跳躍力」を高めることがそれにあたります。
創造性であり、「アナログを掌握する力」です。
そしてもう一つ、その助けとなるのが「根本原理」です。
「稽古の病」と呼んでいるものがいくつかあります。
陥りがちな問題をまとめてそう呼んでいるのです。
そのうちの一つが「小手先の病」です。
何か一つの技や技術を習得しようとする過程で、対症療法的な方法ばかりに目が行ってしまう状態のことを言います。
目次
- 序・「基本」に替わるもの
- 変わらないもの
- 原則
- 我田引水であるということ
- 原則・「不安定の使いこなし」
- 原理・「膝抜き」
- 体重移動
- 筋力系と重力系
- フラフラ歩き
- 習得と言語
- 幼児と習得
- 技を「受ける」
- 理解と吸収
- 日本語英語
- 捨てる力
- 上達と更新
- 忘れる力
- 窮屈と解放
- 根幹から変える
- 栄養
- 解釈の精度
- 解釈は後
- 余計なこと
- 才能
- 不親切と能力
- ランダムとアナログ
- ロボット
- デジタル
- たとえ
- 想像力
- たとえ負け
- 飛距離
- 武術と創造性
- 引用型と創造型
- ゴルフクラブ
- 根本原理
- 根本原理の組み替え
- 通底するもの
- 三層分類
- 松聲館スタイル
- 稽古を読みとく
- 無自覚であること
- 嚙み合わない
- 稽古の病
- 本格派ごっこの病
- 未完成な土台
- 単純な動き
- 癖
- 手慣れた動き
- 依存
- 呪い
- 手術とレース
- 根本原理組み替えの三原則
- 道具癖
- 植え付けと組み替え
- 整理
- 偏見の形
- 許し
- 許せない人
- 怒り
- 許しの練習
- 寛容と我慢
- 難易度設定
- その場しのぎ
- 上達ポイント
- 武術的キャッチボール
- 触覚情報
- 能力を育む
- スポーツの可能性
- 優劣
- 試合の有無
- 理想形
- 試合の無い武道
- 武術
- 術
- 絶滅危惧種
- 達人映像
- カルト化
- 幻想
- 口合気
- 気
- 本当の「技」とは
- できない姿
- 落とし穴
- 身の程
- 遊離
- 強さ
- 考察
- 発想
- オープンソース
- 問題のまとめ
- 綱渡り
- 勝ち負け
- 現実
- 変わりかけの信号
- 宝探し
- 正面押し
- 笑い飛ばす
- 実験
- 取り組み方
- 向上心
- 転ぶ
- 放り込む
- 失敗
- 甲羅
- 天才
- 期待
- 心
- 今を生きる
- 一致
- 武装解除
- 暴力
- 理
- おわりに
- 影観法について
- 「走り」について
- 現代武道について
- 縁
甲野善紀 方条遼雨 著「上達論」
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