スピン性能が向上している最新のウェッジ
各メーカーが発売しているウェッジのスピン性能が進化しています。2010年からクラブフェースの溝規制が段階的に始まりましたが、新ルール適合内の新しいテクノロジーを次々と開発されています。同様に進化を続けるボールの性能も手伝い、より高スピンが可能になっています。プロツアーで見る選手たちのバックスピンショットがそれを表しています。
使うほど劣化していくスピン性能
練習場で使用する分にはウェッジのスピン性能はあまり劣化しませんが、コースで使うとフェースの溝が摩耗しスピン性能が落ちてきます。アプローチ練習場やバンカー練習場で多く練習すると、さらに落ちていきます。インパクトでボールとの間に挟まる土や砂に、少しずつフェースを削られるのです。
最新のウェッジと15年間使われたウェッジを比較
最新のテクノロジーを搭載したウェッジと、15年間使われたウェッジのバックスピン量を比較してみました。最新ウェッジがテーラーメイドのミルドグラインド3で、15年間使われたウェッジはミズノのTシリーズウェッジ(2007)です。
測定日は違いますが、シャフトがダイナミックゴールド、ロフト角が56度、弾道測定器がSKYTRAK、使用球がタイトリストProV1、という条件は同じです。
ミルドグラインド3とミズノTシリーズのバックスピン量を比較 | ||||
ミルドグラインド3 | ミズノTシリーズ | |||
飛距離 (ヤード) | スピン量(rpm) | 飛距離 (Y) | スピン量 (rpm) | |
1 | 86.8 | 8551 | 81.7 | 8394 |
2 | 85.1 | 7550 | 87.2 | 8937 |
3 | 80.3 | 8774 | 87.6 | 8032 |
4 | 86.0 | 6277 | 83.7 | 7758 |
5 | 89.6 | 9980 | 89.7 | 8652 |
平均 | 85.6 | 8226 | 86.0 | 8355 |
スピン量の平均はミルドグラインド3が8226rpmで、Tシリーズが8355rpmでした。今回の条件下での比較では「スピン性能はあまり変わらない」という結果になりました。むしろTシリーズの方が約100rpm高いという結果でした。
ミルドグラインド3の方は、4球目の6227rpmが大きく平均値を下げてしまっていますが、仮にこれが2000rpm大きく8227rpmとなっていたとしても、平均が400rpm上がるだけなので、Tシリーズを約300rpm上回るだけです。あまり変わらない、ということに変わりありません。
高スピンが最良とは限らない
高スピンはボールが止まりやすいことを意味します。アプローチでは、ボールが止まるショットが打てるとピンに寄る感じがしますよね。
しかし、そうとは限りません。スピン量が大きくなるショットは、距離感が合いにくくなる側面があります。例えばスピン性能が高いウェッジの場合、ボールとヘッドがうまくコンタクトすると、フェースとボールが摩擦しスピンが効きますが、摩擦が生じなかった場合、スピンが効きません。一方、特別高いスピン性能があるわけではないウェッジの場合は、うまくコンタクトしてもしなくてもスピン量は大きく変わりません。
つまり、スピン量が大きくなるテクニックやクラブは、良いインパクトとそうでないインパクトの距離の差が大きくなりやすいのです。
インパクトで高確率で良いインパクトになるツアー選手は、硬くて速いグリーン、かつシビアなピンポジションのセッティングでプレーしますから、スピン性能が高いウェッジを使う必要があります。一般ゴルファーが一般的なコースでするウェッジショットを想定した場合は、スピン性能の高いウェッジにこだわる必要はないかもしれません。