ゴルフの難しさを表している「キネマティックス」に対しての「キネティクス」

ゴルフの力学 スイング

「ゴルフは難しい」という声をよく聞きます。ゴルフに対して「ボールは止まっているのになかなかうまく打てない」「球技は得意だけどゴルフだけはどうにもうまくいかない」といった印象を持っていて、思うような結果を出せていないゴルファーは多いのではないでしょうか。

その結果が出ない理由として、イメージしている動きと実際の動きが違う、ということが挙げられます。たとえ初心者でも、練習場で見る熟練者や、メディアで見るプロたちのスイングを見て「ゴルフスイングってこういうもの」というイメージは持っているかと思います。しかし、そのイメージの通りにスイングしても実際の自分のスイングは違うものです。

これは、ほとんどのゴルファーがそうです。ツアー選手レベルでもイメージと実際が違うケースは案外多いものです。では、なぜイメージと実際に差が生じてしまうのでしょうか。キーワードとなるのがキネマティックスとキネティクスです。

キネマティックスシークエンス

外から目で見て確認することができる動きのことをキネマティックスやキネマティックスシークエンスと言います。ゴルファーのほとんどが意識しているのがこのキネマティックスの部分です。最近はスマホで自分のスイングを撮影して課題を見つけて、その課題の改善に取り組む、といった流れはスタンダートなものになってきました。これはキネマティックスの部分に焦点を当てて取り組んでいると言えます。

インパクトの角度など理想的と思われる観測数値が可視化された。その結果、ゴルファーの出力をクラブヘッドに最も効率よく伝えるカラダの運動の順番があることが明らかになった。

この運動連鎖のことをキネマテックスシークエンスといい、TPI(Titliest Performance Institute)などがその重要性を啓発し、そのグラフはいまやゴルフレッスン界で重要視されている。また、技術革新はボールフライトやクラブヘッドの軌道などのさらに詳細な可視化も可能にしたが、このような数値化された観測結果の世界はキネマティックスと呼ばれている

これらの文言は松本協著「ゴルフの力学」内のものです。弾道測定器 トラックマンや、3Dモーションキャプチャ ギアーズなどの登場により、どういうクラブやカラダの動きが理想的であるかが明らかになってきていることを受けてのものです。

松本協のゴルフの力学

ジェイコブス3D 松本協 著『ゴルフの力学 スイングは「クラブが主」「カラダは従」』

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キネティクス

動きの原因となる力のことをキネティクスと言います。キネマティックスを起こす力のことです。目で見ることができない領域のことですが、ここに対しての観点があると、先述したイメージと実際の乖離を埋めやすくなります。

例えば、フォロースルーで左肘が引けているゴルファーと、左肘が綺麗に伸びているツアー選手を比べたとします。キネマティックスの部分では「左肘が引けている」ことと「左肘が伸びている」ことの差になりますが、キネティクスの部分では違ったものになります。

左肘が伸びているツアー選手の、フォロースルーでカラダの内側で起こっていることは左肘の伸展ではありません。左腕はグリップエンドを体側に引き付けようとしています。クラブの遠心力に引っ張られて左肘は伸びるのです。よって、キネマティックスの部分で左肘が引けているからといって左肘を伸ばそうとしても、求める変化を得ることはできないケースがほとんどです。

プロゴルファー 大きなフォロースルー

フォロースルーでは腕を❝伸ばす❞のではない!腕が❝伸びる❞!

「手がクラブにどういった動力を与えているか」「その手の動力はカラダのどのような動きや使い方によって生じるのか」といった世界がキネティクスの世界です。

目で見える動きと、体の内側で起こしている動きを切り離して考える必要性

目で見えているものだけを自分自身のイメージに落とし込んでゴルフに取り組んでも良い結果を得られる可能性は低いです。結果的に得ることができたとしても、とても遠回りをすることになるでしょう。

ただ、スイング中の各ポイントでキネティクスのというものがあっても、そのキネティクスの意識でスイングするべきかというのは別問題です。例えばツアー選手が各ポイントでそのキネティクスで表されたイメージを持っているとは限らないでしょう。

でも、イメージと実際の動きとの乖離を抑制するために、まずはキネマティックスとキネティクスの2つの世界があることを認識しましょう。そうすることで効率的にイメージ通りのスイングに近づきやすくなります。