シャフトを長くすると基本的にはヘッドスピードが上がります。ということは、長尺化すると飛距離が伸びる、ということが言えそうです。しかし、そうとも言えない部分もあるようです。
最近の各ギアメーカーから出ているドライバーは、昔に比べて長くなっています。45インチがスタンダードで、44.5インチや44.75インチのものもありました。
ですが、45インチを切るようなモデルはあまり見かけなくなりました。45.5インチなど、45インチオーバーのモデルが多くなってきているようです。
長尺化すると飛距離が伸びるはず。ですが、一般ゴルファーの飛距離は伸びていないことを示すデータが公開されています。
ゴルファーの飛距離推移
長尺化すると飛距離が伸びるのであれば、一般ゴルファーの飛距離が伸びるはずであるにも関わらず、オンコース・トラッキングシステムのArccos(アーコス)が公開しているデータによると、一般ゴルファーのドライバーショットの飛距離は平行線か、やや下降気味なのです。
男子ゴルファーの平均は2018年の224ヤードに対して、2024年の平均は224.7ヤードと、ほぼ平行線。女子ゴルファーの平均は2018年の179.2ヤードに対して2024年の平均は176.2ヤードと、上がっていないどころか下がっているのです。
ちなみに、米ツアー公式データをによると、米ツアー選手のドライビングディスタンスは伸びています。




長尺化とヘッドスピード
物理的にはシャフトが長くなるとヘッドスピードは上がる。ただ、人が長尺ドライバーを扱うとなると、その物理的な原則とは異なることが起きるようです。
論文「ゴルフクラブのシャフト長尺化によるヘッドスピードの向上(溝口正人、羽柴利直、米山猛)」には、以下の記述があります。
男性被験者のヘッドスピード増加率はシャフトの長さ増加率に比べて大きく,逆に女性被験者の増加率は小さい値を示した.また,プロや上級者は安定した増加率を示すのに対し,中級者の増加率には被験者間で大きな相違がみられた.これらの違いは,被験者の筋力やスイングタイプの違いにより,ヘッドスピードの増大効果に差が生じているものと思われる.
つまり、ゴルファーの筋力やスキルレベルが低くなるほど、長尺化をしてもヘッドスピードが上がるとは限らない、ということです。長くなるほど、ヘッドを走らせきれなくなるのです。
- 緒論
- テストクラブ
- 実験方法
- 結果および考察
- 結言
1.緒論
ゴルフの上達のためには,より大 きな飛距離を得ることが重要である.このため,ゴルファーはトレーニングを重ねる一方で,用 具に対してより高い機能を求める.ゴルフ用具に関しては,従来から様々な科学的アプローチが 行われてお り,クラブやボールの性能向上に寄与してきた.
打点が不安定になる
長尺化すると、打点が不安定になりやすいです
スキルレベルが低いゴルファーや筋力がないゴルファーは、長尺化してもヘッドスピードが上がりにくいとすると、ヘッドスピードが上がらない上に打点がズレやすくなる、といった感じで、デメリットしか受けないことになります。
このように考えていくと、一般ゴルファーの平均飛距離が伸びていない、という現実に納得がいきます。
平均飛距離を伸ばしたいゴルファーは、クラブの長さに注目し、場合によっては短めのクラブを使うことを検討してみても良いかもしれません。