グッドスイングにグッドアドレスは必要不可欠なポイントです。では、「よいアドレス」「よい姿勢(ポスチャー)」とはどのようなことを言うのでしょうか。
このサイトでもアドレスについては述べてきましたが、今回は「基礎運動学~第6版補訂(医師薬出版株式会社)」という本の中にある「よい姿勢とは」の項目を参照しながら述べたいと思います。
基礎運動学の「よい姿勢とは」の冒頭にはこうあります。
よい姿勢、わるい姿勢を判断する基準は、どのような視点で見るのかによって異なる
- 力学的
- 形態学的
- 神経学的
- 運動生理学的
- 心理学的
- 美学的
これら、それぞれはの視点によって「よい」「わるい」の判断は変わります。同じ姿勢でも、ある視点ではよくて、ある視点ではわるい、ということはあり得るのです。
力学的
基礎運動学では、
力学的に安定していること:静止姿勢では、頭部、体幹および四肢の各体節の重心を統合した重心線が支持基底の中に位置していること、その位置が支持基底の中心に近いほど安定性はよい、辺縁になるほど、重力による回転トルクが生じやすくなり、バランスを維持するための筋活動や靱帯の緊張が必要になる
とあります。「重心線が支持基底の中心に近いほど安定性はよい」すなわち、「重心線が前後左右偏りがなくなればなくなるほど安定性が向上する」ということですね。
「母指球側重心」「かかと側重心」で構えるべき、といった考えを耳にする(目にする)ことがありますが、「安定性の獲得」を目指す場合、前後左右偏りなく、重心をセットするべきということです。
土踏まずをメインに体重を支えることが「安定性の獲得」に繋がるということですね。
生理学的
基礎運動学では、
生理学的に疲労しにくいこと:同じ姿勢を長時間にわたって保持すると、筋の血液循環量が低下して、筋疲労が生じる。わずかずつであっても、姿勢を変化させることが筋疲労の軽減に有効である。過緊張による筋の強い収縮も、血液循環の停滞を起こす。なお、循環器、呼吸器、消火器、泌尿器などの内臓器官に過剰な圧迫や負担が加わらない状態であって、正常に機能する姿勢がよい。
とあります。
ここでは「アドレスしてからの足踏みやワッグル」も姿勢として考えています。
プロはペタペタと足踏みをします。
これは、筋疲労を防ぐ目的もあります。体のどこかが動いていると、リラックスしている状態を維持することができます。一方、固まってフリーズしてしまうと、硬直してしまい、スムーズに動くことが難しくなります。
プレッシャーのかかるシーンほど、固まらず過緊張を抑制するために、体のどこかを動かし姿勢を変化させるワッグルを取り入れたいところです。
心理学的
基礎運動学では、
心理的に安定していること:姿勢は、骨格の構造や神経系の働きだけで定まるのではなく、個人のパーソナリティや情動の影響を強く受けて、その時々の心理状態を反映する。
感情や心の持ちかたは、神経系全体の機能に強く影響し、個人の姿勢に表れる。喜び、幸福感、自信などは、伸展位が支配的な姿勢となって表れる。不幸や劣等感は、屈曲位が顕著な姿勢となって表れる。
とあります。
「右OBだ。イヤだな」「池超えるか不安……」「ここは飛ばすぞ」といった心理が働くとそれに応じるように姿勢が変わります。腕が突っ張って、肩が上がった状態になるなどします。
また、調子が悪い時など、首を垂らして、膝が深く曲がり、「うな垂れてトボトボ」と歩いてしまいがちですよね。
そのような流れでショットの時に姿勢(アドレス)をとってしまいやすいので注意が必要です。逆に、高揚し過ぎるのもいけません。
例えば、第1打目が会心のショットでフェアウェイセンター、飛距離も出て、ピンまで残り100ヤード前後、となった時に「行ける!ここはベタピンでバーディーだ」と鼻息荒く高揚してしまうと、姿勢が崩れやすくなります。
いかなるシーンでも、気持ちはフラットに保つことで、安定してバランスの良い姿勢でアドレスすることができます。
作業能率的
基礎運動学では、
作業能率からみて効率がよいこと:作業姿勢は、作業を遂行しているときの身体各部の相対的な位置関係および空間を占めている位置である。姿勢は静的であるが、作業能率をみるときには、同時に動的要素も考慮しなければならない。
とあります。
ゴルフスイングでは「手が体の正面」であり続けることが理想的です。
アドレス時の「静」から、始動の「動」にシフトする時、手が体の正面に合った方がスムーズにクラブを動かし始めることができます。
基準となるアドレス時の手の位置は「左脚内ももの前」です。
これは体の正面の基準となる位置です。ゴルフグリップは、右手を下にするため、背骨が右に傾きます。よって両足の真ん中ではなく「真ん中よりやや左」が体の正面になります。
美学的視点
基礎運動学では、
美的にみて美しいこと:人間の姿勢や運動の美しさを論ずるときの判定基準は、客観的計測だけでなく芸術的視野からも検討される。人間の運動の形式美を構成する要素として、つり合い、均整、プロポーション、律動、躍動感などがある。
パッと見て「バランス良いな」「かっこいいな」と思う姿勢は理屈抜きによい姿勢と言えます。
プロゴルファーなど、上手と言われているゴルファーは美しい姿勢で構えます。「〇〇が△△なっていて~」云々抜きに「美しい」という印象を構えから得るはずです。
この「美しさ」はバランスの質だけでなく先天的なプロポーションも関わってくるので、より高いレベルの「美しさ」を求めた場合、努力ではどうしようもない部分がありますが、より良いバランスを追求することと「美しさ」の追求はセットで考えていきたいポイントです。
よりよい姿勢について まとめ
あらゆる観点で「より良い姿勢」をとらえていく必要があります。
「〇〇が□□で、△△が◇◇~」というように、形だけ整えても「よい姿勢」とは言えません。
体の内側で発生している部分にも目を向けることで「よい姿勢」に近づきます。
「よい姿勢」無くして「よいスイングの安定」はないので、細かい部分にも意識を向けながら、姿勢を構築していくべきです。
姿勢の質を向上させて、ゴルフの質を向上させましょう。