今年、2018の中日クラウンズを勝った選手が、2009年、4大メジャートーナメントの1つである全米プロゴルフ選手権の優勝者で、2000年代、日本ツアーでも活躍したY・Eヤン選手です。
Y・Eヤン選手は、2018年のツアー出場を賭けた、2017年開催のクオリファイングトーナメントを勝ち抜き2018年のツアー出場権を獲得しました。ファイナルクオリファイングトーナメントを1位で通過し、4大メジャーチャンプの貫録を見せつけた形となりました。
2017年のファイナルクオリファイングトーナメントの初日は11月30日でした。この日はレギュラーツアー最終戦『日本シリーズJTカップ』の初日で、日本シリーズの裏で、ある意味日本シリーズよりも熱い戦いが繰り広げられていたのでした。
ファイナルクオリファイングトーナメント出場資格
- 本年度サードクォリファイングトーナメントを通過
- ツアートーナメントにおける、本年度1年間有する出場優先順位(シード権)獲得選手で、翌年度1年間有する出場優先順位(賞金ランキングによる出場資格においては上位75名までの者)を喪失
などの出場資格を得ているツアープロ達が来年のツアー出場権をかけ、6日間に渡り戦います。
レギュラーツアー優勝経験のあるプロもシード落ちするとこの戦いを勝ち抜かなければ、翌年のレギュラーツアー出場権を得られなくなります。ファーストから勝ち上がってきた選手も、レギュラーツアーシード落ちをして参加せざるを得なくなった選手にとっても、まさに決死の覚悟で臨むのがこのファイナルクオリファイングトーナメント(ファイナルQT)なのです。
JGTOの成り立ち
ゴルフツアーやクオリファイングトーナメントは『JGTO(ジャパンゴルフツアーオルガニゼイション)』という組織の主管です。
PGAから分裂して、JGTOが発足し、1999年からこのクオリファイングトーナメントがスタートしました。「プロゴルファーの称号を得たい」というよりも「ツアーに出たい」という選手は、PGAのプロテストをスルーしてQTにトライする選手が多くなってきました。
PGAとJGTOをそれぞれ区分けする場合、「プロゴルファー」と「ツアープレーヤー」とを別の意味で解釈しなければいけない、ややこしい感じに今はなっています。
ファーストクオリファイングトーナメント(QT)は8月頃から
ファーストから数えるとファイナル終了までは約5か月間に及ぶ長丁場です。長い!(笑)
それだけレギュラーツアーを夢見るゴルファーがたくさんいるということですね。選手によっては各ステージのかなり前から、練習ラウンドに行って準備したりしています。ビジネスマンにとっての大きな商談、役者を夢見る人のオーディションと同じなので、それぐらいの準備は当然と言えば当然かもしれませんね。
ファーストQTを突破すればライセンスカードが発行され「ツアープレーヤー」の称号を得られる
ファーストQTを突破すると、「ツアープレーヤー」の称号を得られます。毎年50人ほどの「ツアープレーヤー」が誕生しています。ファーストQTを1度突破すると翌年以降、セカンドQTから出場できます。90打つスキルになろうが、ずっとツアーに出れなくても「ツアープレーヤー」です。
ファーストQTからファイナルQTを勝ち抜くまでにかかる費用
ファーストQTエントリーフィ:108,000円
セカンドQTエントリーフィ:108,000円
サードQTエントリーフィ:216,000円
ファイナルQTエントリーフィ:216,000円
合計648,000円
エントリーフィだけで648,000円かかります。
これにはプレー代や宿泊費などは含まれていませんので、これらの費用も加える必要があります。
ファーストQT:4日間(指定練習日含)、最少3泊
セカンドQT:5日間(指定練習日含)、最少4泊
サードQT:5日間(指定練習日含)、最少4泊
ファイナルQT:7日間(予選、決勝、指定練習日含)、最少6泊
※開催会場の近くに住んでいる選手は自宅から通えますが、ほとんどの選手はホテルなどに宿泊します。
プレー代が1日1万円だとすると、21ラウンドすることになりますので210,000円かかります。
宿泊代は、最少で17泊ですので、1泊8,000円のホテルに泊まったとすると136,000円かかります。指定練習日の前の日も宿泊するとさらにかかります。
※指定練習日は初日の前日に設けられています
次に交通費です。場合によっては、九州の自宅から関東の会場、関東の自宅から関西の会場、といったこともあり得ますので、往復50,000円を超える事もあります。
これに、食事や雑費がかかるので、少なく見積もっても合計1,000,000円を軽く超えます。
と、すごい出費なのです。
そして、ファイナルQTで見事好成績をおさめて翌年のツアー出場資格を得ても、そのツアーでもQTと似たような費用のかかり方になるので、好成績を収めないと出費だけがかさみ、プラス収支になりません。
そのスポーツでもそうだと思いますが過酷な世界ですね!?
新しい選手や、Y・Eヤン選手のような、懐かしい選手が勝ち上がりを見せる代わりに、知名度も実績もある選手が、2018年のレギュラーツアー出場権を失う、ということも起こりました。
ただ、そのような選手でも、マンデートーナメントという、各試合ごとの予選会を勝ち抜いたり、主催者推薦を得る事ができるとレギュラーツアーに出場することができます。
いずれにしても厳しいプロゴルフツアーの世界!表舞台に立とうとする男子ツアープロの戦いが、日本シリーズの裏で、ギャラリーのいない会場で、ひっそりと始まりひっそりと幕を閉じていたのです。
……いや、ひっそりではありませんでした。今回はAbemaTVでネット配信されていたんです。これまでよりも脚光浴びたファイナルQTでした。
2018年はこのファイナルQTを勝ち抜いた選手の中から、Y・Eヤン選手以外にも活躍する選手が出てくるのでしょうか。