「不器用な人」の方が最終的に伸びると心得る

上達の技術 ゴルフ本

どんなスポーツでもそうですが”センス”というものがキーワードになることがあります。センスがある人、つまり器用な人はゴルフを始めてすぐに上手にボールを打つことができます。一方、不器用な人は練習を重ねてもなかなかうまくボールを打つことができません。

児玉光雄著「上達の技術」の中に「不器用な人の方が最終的に伸びると心得る」という章があるので、その内容を踏まえて述べてみたいと思います。

児玉光雄氏
  • 1947年兵庫県生まれ
  • 京都大学工学部卒業のスポーツ心理学者
  • 追手門学院大学 スポーツ研究センター特別顧問
  • 前鹿屋体育大学教授

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上達の技術

対物スポーツの練習では好プレーの再現にこだわる?

スポーツには向き不向きがある

児玉光雄氏はテニスの専門家なので、テニスの事例が随所に出てきます。テニスを学ぶ人について次のように述べています。

数時間でラケットに当ててナイスショットを打てる人もいれば、何年もテニス教室に休まず通っているのになかなか上達しない人もいます。スポーツに向き不向きがあるかといえば、ある特定のスポーツに向いている人(運動神経が発達している人)とそうでない人が存在するのは事実です。しかし、あらゆるスポーツをこなせる運動神経をもつ人はほとんどいない、というのが私の持論です。

ゴルフでもそうですね。クラブを初めて握ったその日から良いショットを打つことができる人もいれば、ある程度良いショットが打てるようになるまで時間がかかる人もいます。

時間がかかる人の中には、学生時代に他の競技で活躍した人がいます。その競技に向いていたが、ゴルフには向いていない、ということになるのでしょうか。

器用な人は意外に伸びない

児玉氏は「スポーツには向き不向きがある」と述べている一方、「器用な人は意外に伸びない」と述べています。

器用な人は短期間に上達しますが、早い時期に停滞が始まります。一方、不器用な人は、最初なかなか上達しないのですが、努力を積み重ねるうちに着実に上達していき、最終的には器用な人に追いつくのです。

ゴルフ上達の重要な要素として、反復練習をして動きを体に覚えこませる、刷り込む、というものがあります。

器用な人は、うまく打つことができるので、どんどん次の新たな課題に取り組み始めます。しかし、次から次に新たな課題に取り組んでいると、取り組んできた動きを体が覚える前に次の課題に取り掛かることになってしまい、結局必要な動きを自分のものにできない、ということになってしまいます。

器用な人というのは、必要な動きを再現性高く実行しているとは限らず、スイングバランスを崩した時のアジャスト能力が高い、というケースがほとんどです。必要な動きが固まらず、アジャスト能力に頼り続けていては、いつか大きな壁にぶち当たることになります。

一方不器用な人は、器用な人に比べてうまく打つことができないので、同じ動きを何度も何度も反復して練習します。

良い動きをしても、覚えても、良いショットになるとは限らない、というのがゴルフの難しいところなので、動きが良くなってもすぐに結果が出るとは限りません。しかし、良い動きの反復練習をしていれば、良い動きを体が覚えられます。そして、少しずつ良いショットが高確率で打てるようになってきます。

その地道な取り組みを継続することで、不器用な人は確かな上達を獲得します。

器用な人と不器用な人の練習曲線の違い

出典:上達の技術(サイエンス・アイ新書)

チャンピオンは、案外不器用な晩成型のアスリートが多い

児玉氏は、世界4大大会を計19回制しているスペインのラファエル・ナダル選手を例にとって、劣っている点を補えるだけの努力をすることの大切さを説いています。

ジュニア時代、ネットプレーやバックハンドストロークが大の苦手だったといいます。しかし、彼は血のにじむような鍛錬により、自分が得意な卓越したサーブと強烈なフォアハンドに磨きをかけ、それらの武器で苦手なショットをカバーしたのです。

ナダル選手は苦手な分野があり、それを得意な分野でカバーする努力をしたからこそ偉大なプロテニスプレーヤーになれたとのこと。

運動神経や体格などの点で少し劣っていて、その点を補おうと努力を積み重ねたアスリートが大成する、と述べています。

「なかなか上達しない」と悩んでいるゴルファーは、自分に必要な取り組みを正しく見極め、ことこつと反復練習をしましょう。上達するにはそれ以外にありません。正しい反復練習であれば、いつか、結果に表われます。

上達の技術 児玉光雄著

参考価格:1,100円(税込)