全英オープン2018でのプレーぶり、飛距離を見ても、まだまだ第一線で戦えることが証明されました。おそらく、全盛期に比べて各関節の可動域や筋力の低下は、あると思いますが、その分それを補うように、身体への負担を減らすことも考えて、より一層無駄な動きが少なくなったという見方もできそうです。
前回はアプローチスイングについて解説しました。
今回はドライバースイングについて解説したいと思います。
タイガー・ウッズのドライバースイング
アドレス
ややつま先寄り重心のアドレスです。左膝に大きな怪我を負っていた過去もあるので、より体の負担を軽減する事を考えればもっと足裏の真ん中寄りで体重を支えた方が良い気もしますが、何十年もの間、慣れ親しんだバランスのアドレスというものがあるでしょうから、ここを大きく変えることはしないのでしょう。
左膝の怪我を押して戦い、優勝(現状最後の4大メジャー大会優勝)した2008年全米オープンの模様を下記動画よりご覧ください。
72ホール目、劇的なバーディーを決めて、翌日のロコ・メディエイトとの18ホールプレーオフに持ち込み、勝利しました。計90ホール、怪我をおして戦い劇的に勝利した代償が、この後4大メジャーで未勝利、なのか……
さて、2018年のタイガー・ウッズのスイングに戻りましょう。
グリップ位置は基本に忠実に左足内もも前です。背骨の傾きに骨盤の傾きがマッチしています。スタンス幅は4足幅程度なので、足の長い欧米人の場合は基本の範囲内でしょう。※ドライバーの、スタンス幅の目安は、3足幅から、3.5足幅です
右肘の内側が正面を向いた状態で曲がっています。
テークバック
アドレス時の手と体の距離を変えず、ノーコックのテークバックです。ヘッドが手より外に位置していることからも、腕とクラブの関係を保って、体主動で指導していることが分かります。
この段階で右股関節は内旋していますが、左膝の位置はさほど変わっていないことから、左股関節は外旋を開始しています。
バックスイング
右手が左手より上です。クラブフェースのトゥが、ヒールより前側にあります。フェースが開いていないということです。腕や手に頼らず、ここでもまだ体主動で動いている証拠です。
右肩甲骨が見えそうなぐらい胸椎を回旋させてもまだ左腕は地面と平行で、左腕とクラブの間の角度は鈍角です。ノーコックですね。
右股関節の内旋止めないながらも、左膝はこの段階でも内側に入ってきません、左股関節が外旋し続けているということです。
胸椎の回旋につられるように、首も一緒に回っていきます。
トップオブスイング
クラブの向きも、クラブフェースの向きも”ド”がつくぐらいスクエアです。右肘の外側が地面を指しています。
右肩甲骨が丸見えになるぐらい、胸椎が回旋し、右股関節が内旋しています。であるにも関わらず、グリップは頭より右側にあり、胸の両腕の間にあるフトコロが保たれています。
この段階でも左膝は内側にさほど入りません。左股関節が外旋し続けています。
バックスイングからトップオブスイングにかけて、はじめてコッキングされています。手首に角度がついてきています。
しかし、これは手首に角度をつけようとして意図的に手首をカクンと折っているのではなく、バックスイング中のクラブの遠心力を体幹で受け止めることで、クラブの遠心力によって、”手首がカクンと勝手に折られる”という流れが生じているのです。
ダウンスイング
一気に左股関節を内旋させます。それにつられて、右膝も前に出てきて、右足踵が浮き始めます。しかし、胸椎は右回旋を維持し、右肩がトップの位置付近にとどまっています。右肩を前に出さないことで、理想的なスイングプレーンを作り出しています。
この『バックスイングからダウンスイングの切り返しで、下半身の爆発的な力を使いながらも、上半身が下半身の動きにもってかれないスイングコントロール』が、タイガー・ウッズのストロングポイントといえるでしょう。
筋力、柔軟性、センス、すべてが必要かもしれません。
又、手元は一気に降下しますが、ヘッドは上に残ったままです。強烈な手首のタメが作りだされています。これは手首の意識で作り出しているのではなく、上半身がバックスイングの途中で、左足への爆発的な体重移動、左股関節の強烈なスピードの内旋、が行われることによって作り出されています。
さらに、この写真を見ると、左手甲の丸まり具合や、フェースの閉じ具合から、前腕の回旋が進んでいるということが分かります。左前腕の回外、右前腕の回内、です。
インパクト
トップオブスイングでは前に出ていた右膝がダウンスイングでは引っ込んでいます。右脚が伸びています。
右股関節が外旋しているからです。それにより、上半身の開きを抑え、体のエネルギーをクラブに伝えきることができます。
タイガー・ウッズのダウンスイングからの股関節の動きの流れをまとめると(タイガーだけではなくほとんどのプロは度合いに差があれど同様の流れです)、「強烈に左足に体重移動しながら、左股関節を内旋させ、その後、右股関節を外旋させる」となります。
右股関節を外旋させ、『上体の開きを徹底的に抑える』ことを大切にしていることが正面の写真を見てもうかがえます。
また、昔に比べて、肩の上下動が抑えられています。
フォロースルー
肩の上下動の抑制に成功したことが影響してか。左足裏の内側のめくれが抑えられ、両肩が背骨に対してレベルに動くシンプルな動きになりました。
よって前腕の回旋動作もナチュラルです。昔は、肩の上下動が激しかったことで、前腕の回旋し過ぎを防ぐために、あえて少し左肘を引く、といったやや複雑な動作を取り入れていました。
フィニッシュ
バランスの良いI字フィニッシュです。フィニッシュでも左足裏がめくれません。
力感よりもバランス重視になった!
始動からフィニッシュまで、全盛期に比べ、良い意味でおとなしいスイングになりました。これからタイガーの第2次全盛期が始まり、ものすごい勢いでメジャーを含めて勝利を積み重ねてきた全盛期がもう一度よみがえるかもしれませんね!?
もう一度、第2次全盛期と言われるような、強いタイガーを見られることを期待しましょう!