「ジュニアの試合総なめ」でも最強プロゴルファーには繋がらない?

ジュニアゴルフと高校野球 ジュニア

現代ビジネスというサイトに非常に興味深い記事が掲載されていました。『”甲子園を目指さない”ことが、結局最強チームを作る近道だった』という、元メジャーリーガーで国内ではオリックスで活躍した長谷川滋利氏の記事です。これは筆者がとても共感できる内容でした。以前からジュニアゴルフ界でも同様のことが言えると感じていました。長谷川氏はある講演で「もし長谷川さんが高校野球の監督に就任したら、どういうトレーニングをしてどんなチームを作りたいですか?」という質問があり、その問いに対し出した答えが「甲子園を目指さないチーム」というものだったようです。

この記事では、「最強の選手育成は”甲子園を目指さない”事が条件となる」という結論に至った経緯が書かれています。これは『最強の日本人プロゴルファー育成の為のポイントは”ジュニアの試合で好成績”ではない』と置き換える事ができるかもしれません。

「甲子園を目指さない」ことが、結局最強のチームをつくる近道だった(現代ビジネス)

目の前の試合に勝つ事が成長の足かせになることがある

甲子園への道や、甲子園本大会の魅力は『負けたら終わり』という状況下で起こる白熱した戦いです。そこで起こるドラマが感動を呼びます。しかし、その『負けたら終わり』の状況下が選手のスケールを小さくしてしまう可能性がある、と、長谷川氏は述べています。実際の記事ではこう書かれています。

負けたら終わりの甲子園への道では、どうしても強い打球を飛ばす打撃より、なんとか転がすバッティングが優先されてしまいます。ボテボテの内野安打でも、相手のエラーでもとにかく塁に出て、それを送って内野ゴロでも犠牲フライでも、とにかく1点を取る。エースのピッチャーが投げ、鍛え上げられた守備でその1点を守り切って勝つ。そんな野球になってしまいがちです

プロ野球選手を目指す、という事を考えるのであれば、チームとしてこつこつ1点を積み重ねて勝負に勝ちに行く事は、プロレベル、世界レベルの選手を育てる足かせになる可能性がある、ということですね。

長谷川氏が考える、高校生の理想的なトレーニング

プロの世界で活躍するための理想的なトレーニングについてこう述べています。

普段からミドルティーンの成長に合わせた適度の負荷のトレーニングを積んで、週末は実戦をする。週明けは完全休養日

バッティングひとつとってもまずはボールを遠くに飛ばこと。野球の原点に立ち返って、そのために効果的なトレーニングをするには何が必要か、選手とともに考える

目先の1勝の為のテクニックより、中長期的な目線で才能を開花させる下地作りが必要ということですね。

ジュニア期には好成績を収める事より大切なことがある

ゴルフにおいてジュニア期に時間を割くべきは、『スコアメイク』ではなく、『基礎体力アップ』(長谷川氏の言葉を借りるなら、ミドルティーンの成長に合わせた適度の負荷のトレーニング、です)と『ショートゲームスキル向上』です。しかし、現状はジュニアからボールを真っすぐ飛ばすためのスイングプレーン調整や、スコアメイク術に重きを置く傾向にあります。

ジュニア大会に出場しているジュニアに「あなたの夢は何ですか?」と聞くと、多くのジュニアゴルファーは「プロゴルファー」と答えるでしょう。であるにも関わらず、眼前のラウンドで良いスコアでプレーする為に、眼前のラウンドでまっすぐボールを飛ばすためにスイング調整を一生懸命しているジュニアがとてもたくさんいます。眼前のラウンドで満足いく成績でプレーする事と、15年後プロゴルファーとしてプロの舞台で活躍する事はリンクするとは限りません。もっと大切な事がたくさんあるのです。

ジュニア期から14本のクラブを駆使して好スコアを目指しても肝心な”チカラ”は磨かれない

『狭いホールだろうがクラブを強く振る事』『ハザードのサイドにピンが切っていてもピンを狙うマインド』『少々のオーバーは気にもとめない強気のパット』『グリーン周りのどこからでもチップインが狙える程のショートゲームスキル』等、『スコアをまとめるゴルフ』ではなく『大きなゴルフ』を育てる時期がプロを目指している人のジュニア期であるべきです。どれもこの時期に育てずにいつ育てるの?というものではないでしょうか。

今までもジュニア期に世界の舞台で好成績を収めてきた日本のジュニアゴルファーはいました。しかし、プロゴルファーとして世界の舞台で活躍した選手は多くいません。原則、先天的な部分で体力では欧米人に勝つことは難しいのですから、取り組み方で持って生まれた体力の差をカバーしないと太刀打ちできないのは明白です。

言い過ぎかもしれませんが、スイングの形はあとでどうにでもなります。しかし、強くクラブを振る体力は、あとでどうにかできるものではありません。ジュニア期にどのぐらいクラブを強く振る体力をつけるか、で、その後のクラブをどれぐらい強く振れるか、が決まります。感性を活かす必要があるショートゲームのスキルもジュニア期にどう取り組むかがとても大切です。

中長期的観点にたって、ジュニアが夢や目標に近付く為に『今何をするべきか』をまわりのそのジュニアに関わっている人達が、考えてあげられるとよいでしょう。