体幹について

ゴルフ フィットネス カラダ

このブログでも繰り返し述べてきたことの1つが「体幹の動きが腕の動き、クラブヘッドの動きをコントロールすることの重要性」です。体幹主動でスイングすることができると、質の高い運動連鎖が生まれ、力の伝達効率、動きの再現性、が高いレベルで安定します。

元プロ陸上選手で、世界選手権銅メダリストの為末大氏が体幹について述べていますので、ゴルフの競技性に置き換えながら考えてみたいと思います。


私のパフォーマンス理論Vol2‐体幹について‐(TAMESUE『THINK』)

体幹と呼んでいるものの具体的な位置は実ははっきりしていない。学術的にははっきりしているのかもしれないが、スポーツの現場ではトップ選手でも具体的な場所を把握していなかった。私がイメージしていたのは、腸腰筋、脊柱起立筋下部、腹直筋下、内・外腹斜筋、腰方形筋あたりだった。特に腹斜筋はよく意識した

私のいう体幹の範囲は大腿部の付け根部分から上、おへそより下のあたりが範囲なのだろうと思う

為末氏は胴の下の方の筋肉を特に意識していたようです。

例えば腹斜筋はテークバック、フォロースルーで、胸椎回旋の動きを受け止める時に働く筋肉です。アドレス時の前傾角度に沿ってバランスよく体を回す為にとても重要な筋肉です。

特定の部位に対する意識が難しい場合は、『体幹=頭部と四肢以外すべて』とし、まずは腹筋群や背筋群の内の意識できるところを意識しましょう。

体幹がなぜ重要なのか。それは股関節周辺に最も大きな筋肉が集まっていて、力を生み出す源であり、また上半身と下半身を接続する部分だからだと考えていた。立位で行うスポーツの場合、力というのは基本的に地面からもらっている。地面に力を加え返ってきた力を伝達することでパフォーマンスを発揮している。走るのも打つのも蹴るのも投げるのも、まず地面を踏んでいる

「ゴルフでも地面を蹴る力を使うことが重要だ」という認識は一般的なものになってきました。2017年にUSPGAツアーでブレイクしたジャスティン・トーマス選手スイングが注目されたことが大きなきっかけになりました。

USPGAの中で体が大きい方ではないにも関わらず、ジャスティン・トーマス選手は飛距離が出ます。そして同選手のスイングはインパクト前から左足踵が浮き、ジャンプしているように見えることから「ジャンプしている」「地面を蹴っている」とゴルファーから注目を集めました。

「この動きが飛距離の源だ」と。

ジャスティン・トーマス選手の活躍もあり、以前に比べて「地面反力」「床反力」というワードを知り、意味をなんとなくでも知っているゴルファーは増えていることと思います。

ただこの”蹴る”というワードは、”脚部”を連想してしまいがちですが、理想的な蹴る部位の意識は”脚部”よりも”臀部”です。

蹴る力をつけるトレーニングにスクワットがありますが、これも脚部ではなく臀部を主として鍛えるためのものです。

臀部の筋肉は大きく強いです。臀部の筋肉を効果的に使うことで、より力強く地面を蹴ることができます。

陸上競技であれば地面を踏む瞬間に体重を乗せて股関節伸展をしているが、その股関節伸展をしている際に根元を固定するのが体幹になる。体幹が弱ければ土台が固定されていない砲台のようになり、踏み込んだ瞬間ぐらっと揺らいで十分な力も精度もでない。また地面に力を加えその反力が戻ってきた際にも、体幹が固定されていれば力はそのまま上半身に伝わるが、弱ければ力が途中で逃げる

ゴルフスイングは、終始前傾姿勢の状態のまま行います。そして、体の正面(前側)で300~500グラム程の、先端寄りに重心があるゴルフクラブをビュンッと勢いよく振ります。

よって、前方、下方に大きな重力や遠心力がかかります。この時、バランスを崩さず、インパクトからフィニッシュへとスイングできるか、が精度高くショットできるかどうかの大きなポイントになります。

テークバックでは右に遠心力がかかります。遠心力に身体がもっていかれてスウェイしないこともショットの精度を高める為のポイントになります。

バランスよく胸椎や股関節を回旋させながら、スイング中『前後左右上下』方向への、身体やクラブの重力や遠心力と拮抗し、バランスを取る働きをするものが体幹です。

この体幹の働きがあってはじめて、先に述べた地面を蹴る力を余すことなく腕へ、クラブへ、そしてボールへと伝えることができます。

私の結論では極端に言えば、人間の状態は、体幹が使えているか、使えていないかの二種類しない。もし使えていなければ体幹トレーニングは体幹を鍛えているというよりも力を入れるためのコツを探しているのに近い。一旦使えるようになれば全ての動作に体幹を使ってしまうので、日常動作すら体幹トレーニング化する。極論だが体幹トレーニングというのは存在せず、トレーニングは全ては体幹トレーニングと言える

トレーニングジムなどで体幹トレーニングをし始めた人が数回のトレーニングで「体幹の筋力がついたから最初より楽にトレーニングをすることができるようになった」と感想を述べるケースがあります。

しかし、これは『体幹の筋力がついた』というより『体幹の力の入れ方が上手くなった』というケースの方が多いです。筋力自体はあまり変わっていなくても、元々あったものを活用できるようになるとこういう感覚になります。

 

 

体幹に力が入るようになれば何が起きるか。まず肩の力が抜け柔らかくなる。肩や身体の末端部に力が入るのは、中心部でコントロールしきれていないものを調整するために負荷がかかっているからだ。中心でコントロールしきれれば末端は弛緩できる。素人がスキーをやって全身筋肉痛になるのはそういうことで、熟達者になれば入れるべきところに入れた後は、全身遊んでいる

例として挙げられている初心者スキーヤー同様、ゴルフを始めた頃、練習場で練習した後、手や腕が痛くなった経験があるゴルファーも多いことでしょう。初心者のうちはどうしても、グリップ圧が強くなったり、手先だけでクラブを操作しようとしがちなので、手や腕が痛くなりやすいです。

また、「どうしても切り返しで腕に力が入ってしまう」という悩みを抱えているアベレージゴルファーも多いと思います。

しかし、こういった状況に対しひたすら「腕を脱力しよう」だけでは解決しません。腕が力んでしまう原因は腕だけではなく体幹にもあるからです。体幹が効果的に使えていないことで腕が力んでしまうのです。

体幹で腕やクラブの動きをコントロールする意識が高まれば高まるほど、体幹の使い方が上達すれば上達するほど、腕が脱力したしなやかなスイングになります。

女子プロゴルファーのショットを見て「軽く振っているのに飛ぶなぁ」という印象を受けるのは、『体幹の力を使って、腕の力を抜いている』からです。本人達は、軽く振っている訳ではなく体幹の力を存分に使って結構一生懸命振っています。腕の力が抜けていることで、軽く振っているように見えているだけです。

 

私の感覚ではともかく正しい姿勢での座り立ちが一番腹圧を高める感じがわかって効いた

椅子に座っている状態から、立ち上がる時、まずどこに力が入るでしょうか。体幹です。

座って、そして立ち上がってみて下さい。腹筋群などの体幹部に力が入ってから時間差があって、臀部が浮き、立位の姿勢へと変わっていくはずです。

又、『歩く』という動作も体幹がコントロールしています。主は脚部ではありません。

これも座ってみてください。そして、片足を上げてみてください。立ち上がる時同様、腹筋群などの体幹部に力が入ってから時間差があって足が上がることが分かると思います。

年を老いていくとよく躓くことがあるようです。これは「足が上がらなくなった」「股関節が固くなった」と思われがちですが、それだけでなく「体幹が使いにくくなった」ことも挙げられます。

そういったことを踏まえると、先に述べた『地面を蹴るのは臀部の役割』という点にいてもっと深くたどっていけば、足が地面を蹴るのは体幹の働きによるものとなります。

地面を蹴る力も、足で蹴るのではなく、体幹の動きが連鎖して臀部が、そして足が”蹴らされている”というところが本質となります。

ジャスティン・トーマス選手のジャンプするような蹴る動きも、決して臀部や脚部の力が主動しているわけではありません。重力や遠心力と拮抗するように体幹を効果的に使うことで、臀部、脚部へ連鎖した結果、ジャンプするように蹴っているように見える、というところが本質です。

重力や遠心力と拮抗するような体幹主動の結果、地面反力が発生します。

 

現役の終盤では、体幹トレーニングは立って行なっていた。というよりスクワットをしてもデッドリフトをしてもスナッチをしても腹筋含む体幹がヘトヘトになったので、あまりそれ以外のことはしていなかった。そのような経験から、熟達すれば結局全てのトレーニングが体幹トレーニングになると考えていた

「全てのトレーニングが体幹トレーニング」…… なるほど。

ゴルフに置き換えてみると、30cmのパッティングからドライバーショットまで、すべてのスイングが『体幹主動』さらには、ゴルフ場コースを歩く時まで『体幹主動』であるべきです。

プロゴルフツアーの中継を見てみると分かりますが、プロゴルファーは歩く姿勢が良いです。元々そうであった者、意図的にそうした者、様々だと思いますが良い姿勢は体幹の動きが良くなります。

 

体幹主動について考えた時、「無意識にそうなるのであれば体幹主動の意識は必要ないのでは?」と。

たしかに、『体幹発の運動連鎖』は元々人にはある機能なので、わざわざ体幹主動を意識する必要はないといえばそうなります。

ジュニア期には体幹主動をわざわざ意識する必要はあまりないでしょう。結果にとらわれずその運動自体を楽しむことで自然とそうなるでしょうから。そしてその運動自体が体幹トレーニングになります。

しかし、大人になって新たな未熟な運動に取り組む場合、結果重視になり”余計なこと”をしてしまいがちです。末端での調整です。

そういった末端が過剰に使われてしまう大人が元々あるはずの『体幹発の運動連鎖』を呼び起こす為には、意識して体幹主動の動作を獲得する必要があります。

また、脚力や腕力がついてきたら、体幹の力がその力に耐えられるように鍛えることも重要です。体幹の力が、末端の力を支えられる力が無いと、体幹主動の動作は難しくなり、バランスを崩しやすくなります。

そういった点で、体幹についての意識を高めていくことはとても大切です。

 

ゴルフは道具に依存している競技性を持っていますが、その道具を使いこなすのは身体です。そして、その身体をコントロールするのが体幹です。体幹の意識を高め、体幹の使い方とクラブの動きを関連付けて考え理解を深めることができると、より質の高い練習が可能になり、上達へと向かうことができるでしょう。

【TAMESUE『THINK』】引用記事 特集